「かかりつけ薬剤師」の実現を握る医療DX、集患・リピート率アップに電子版お薬手帳が最適な理由

2024年1月15日

概要

医療を取り巻く状況が変化していく中、今後も患者様に必要とされる薬局であるためにはどうすれば良いのでしょうか?

この記事では、今後求められていく薬局の在り方を解説するとともに「かかりつけ薬剤師」を実現するためのポイントをご紹介します。広域からの集患やリピート率にお悩みの方はぜひご覧ください。

「薬局ビジョン」にみる、これからの薬局の在り方

平成27年に厚生労働省が発表した「患者のための薬局ビジョン」では、現在の薬局の課題を指摘するとともに今後の在り方を変化させていく必要があるとしています。
これまで推進してきた「医薬分業」においては、薬剤師が患者様の状態や薬を一元的・継続的に把握することで、薬物療法の安全性や有効性を高められるメリットがありました。
しかし一方で、患者様が医療機関を受診するたびに異なる薬局で調剤を受けるシーンが多くなり、本来目的としていた「服薬情報の一元的・継続的な把握」が困難になっているのではないかという課題もありました。

ここからは、「患者のための薬局ビジョン」で示されているポイントを具体的に解説していきます。

「門前」から「かかりつけ」への移行

先述した通り、患者様がそれぞれの医療機関の門前薬局にかかることで医薬分業のメリットを実感しにくいという実態が指摘されています。こうした背景のもと、推進されているのが「かかりつけ薬剤師」です。​

これからの時代、薬局は患者様が薬について安心して相談でき、それぞれに最適な処方ができるような存在を目指すことが求められます。
そのためには、調剤業務を行うのみでなくコミュニケーションを重視して対人業務にシフトし、「かかりつけ」として一人ひとりの患者様に継続的・長期的に向き合える体勢を整え、選ばれる存在になっていかなくてはなりません。それにともない、従来の「立地優先」の薬局経営から「機能優先」の薬局にシフトチェンジしていく必要があるでしょう。​

こうした課題に向き合い、「かかりつけ薬剤師」として継続的に処方を担当し、多剤・重複投薬や相互作用を確認して医師に提案できるようになれば、より安全で満足度の高い医療を提供できるようになります。

地域包括ケアシステムと服薬情報の一元・継続管理の実現

​「地域包括ケアシステム」とは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを送ることができるよう地域の医療や介護生活の支援、介護の予防が継続的に提供されるシステムのことを意味します。​

そして「かかりつけ薬剤師」としての立場を確立することは、地域包括ケアシステムの一翼を担うことにつながります。

患者様が複数の医療機関を受診した場合でも、かかりつけ薬剤師として処方を一元管理できれば過去の服薬情報が把握でき、「薬や体調についていつでも相談できる存在」として地域の医療をつなぐ存在となります。また、在宅で療養する患者様に対しても柔軟なサポートが可能になります。

一人ひとりの患者様に対してより適切な処方を行うためには、個々の薬局で情報を持つのではなく、ひとつの薬局が継続的に情報を持ち蓄積していかなくてはなりません。服薬情報の一元・継続管理の実現も、今後薬局が目指すべき目標として挙げられています。

対物業務から対人業務への役割の変更

かかりつけ薬剤師としての役割を発揮するためには、業務面での変革も必要です。
従来の薬剤師業務は、以下の表に示されるように薬を中心とした業務が主でした。しかし今後、数ある薬局の中から「かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師」として選ばれるには、薬剤師としての専門性やコミュニケーション能力の向上が不可欠です。

薬中心の業務(対物業務) 患者中心の業務(対人業務)
  • 処方箋受取・保管
  • 調製(秤量、混合、分割)
  • 薬袋の作成
  • 報酬算定
  • 薬剤監査・交付
  • 在庫管理
  • 処方内容チェック(重複投薬、飲み合わせ)
  • 医師への疑義照会
  • 丁寧な服薬指導
  • 在宅訪問での薬学管理
  • 副作用・服薬状況のフィードバック
  • 処方提案
  • 残薬解消
薬中心の業務(対物業務)
  • 処方箋受取・保管
  • 調製(秤量、混合、分割)
  • 薬袋の作成
  • 報酬算定
  • 薬剤監査・交付
  • 在庫管理
患者中心の業務(対人業務)
  • 処方内容チェック(重複投薬、飲み合わせ)
  • 医師への疑義照会
  • 丁寧な服薬指導
  • 在宅訪問での薬学管理
  • 副作用・服薬状況のフィードバック
  • 処方提案
  • 残薬解消

「かかりつけ薬剤師」が定着するにつれ、これまで以上に一人ひとりの患者様に向き合うことが求められるでしょう。患者様や地域住民のニーズに応え、いつでも気軽に相談できるような、地域に根差した存在となっていく必要があります。

ますます高まる医療DX・薬局DXの重要性

ここまで解説してきたように、より安全で満足度の高い医療の提供のためには「かかりつけ化による服薬情報の一元管理」や「医療機関・地域との綿密な連携」が重要となります。また、少子高齢化により医療を必要とする人が急速に増加していく状況において、今後も変わらず継続的に質の高い医療を提供していくことが課題となっています。
こうした課題を解決するために、医療・薬局におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)導入の重要性はますます高まっていくと予測されます。

令和5年に電子処方箋の運用が開始され、オンライン資格確認導入が原則義務化されました。また、令和6年には診療報酬改定を控えています。対物業務の負荷を軽減し、限りあるリソースを対人業務にあてるためにも、DX化はもはや将来的な目標ではなく、今から取り組むべき急務であるといえるでしょう。

令和5年3月「電子版お薬手帳ガイドライン」の概要

年々高まりを見せる医療DX・薬局DXの重要性は、患者様とのコミュニケーションツールでも求められるようになってきています。
令和5年3月に厚生労働省から公表された「電子版お薬手帳ガイドライン」では、お薬手帳の意義と役割を定義するとともに、今後電子版お薬手帳に求められる機能や留意すべき事項がまとめられています。

ガイドラインに示されるように、電子版お薬手帳は単に処方の情報を記録するだけではなく、電子処方箋の情報を補完して患者様の服薬状況を一元的・継続的に管理でき、患者様の服薬管理を支援するツールとなることが期待されています。つまり、これまでに解説してきた課題を解決する一助として、全国の医療機関や薬局で電子版お薬手帳が活用されていくことが求められているといえるでしょう。

「電子版お薬手帳」がもたらすメリット

ここからは、具体的に電子版お薬手帳の導入によりどのようなメリットが得られるのか解説していきます。

服薬情報の一元・継続管理

電子版お薬手帳を用いれば、複数の医療機関や診療科を受診した場合でも処方データを一元管理できるようになり、多剤・重複投薬や相互作用を防止することが容易になります。また、過去の服薬情報がわかるようになることも大きなメリットとして挙げられます。
加えて、処方後の副作用や期待される効果の確認、在宅療養の患者様への薬学的管理も容易になり、ひとりの患者様を継続的にサポートすることにつながるでしょう。

「患者中心の業務」の実現

薬中心の業務(対物業務)から患者中心の業務(対人業務)へのシフトにおいても、電子版お薬手帳が役立ちます。
令和5年から運用が開始された「電子処方箋」やマイナポータルと電子版お薬手帳を連携させれば、特定健診やこれまでの処方に関する情報が補完され、一人ひとりに寄り添ったサポートが可能になります。

また、対人業務に十分な時間を割くためには、同時に対物業務の負荷を軽減することも重要です。その点に関しても、たとえば「他の薬局で処方された薬のデータをお薬手帳から手入力する」という従来の作業に対し、電子版お薬手帳なら自動で電子薬歴に取り込むことが可能になり、業務の効率化につながります。

患者様とのコミュニケーション促進

患者様が安心して健康や服用する薬について相談できるような存在となるために、今後よりいっそう「コミュニケーション」に重きを置く必要があります。
慢性的な疾患がある患者様はもちろん、そうでない患者様とも定期的なコミュニケーションが行えていれば、症状が軽度な段階での早期発見につながります。医療を必要とする人口が増加し続けるであろう今後の日本において、こうした日頃からのコミュニケーションは重要性を増していくでしょう。また、残薬の解消や処方の提案などにおいても患者様との対話が欠かせません。

こうした課題に対しては、スマートフォンなど患者様にとって馴染みの深いデバイスを通じてのコミュニケーションが有効です。そこで電子版お薬手帳のアプリを通してオンライン服薬指導を行えるようになれば、処方後も上記のような継続的なフォローアップが可能になります。

先述した「電子版お薬手帳ガイドライン」においても、実装が望ましい機能として「利用者と薬剤師等が相互に相談・連絡等を行うことが可能な機能」が挙げられています。お薬手帳としての導入だけでなく、患者様と薬剤師をつなぐコミュニケーションツールとしての導入も有効です。

「かかりつけ化」の実現

冒頭でご紹介した「薬局ビジョン」に示されるとおり、今後薬剤師は患者様から「かかりつけ」として選んでいただき、地域医療と連携しながら患者様と長く関わっていくことが求められます。

そのためには、ここまでに解説してきたように患者様の情報を一元・継続管理できる環境の構築や、患者様に対する丁寧な服薬指導などのサポートが必要です。電子版お薬手帳の導入により課題を解消して「かかりつけ化」を実現できれば、継続的な集患やリピート率の向上につながることでしょう。

​​まとめ​

​医療や薬局を取り巻く状況が変化し続ける中、長期的に患者様に寄り添う「かかりつけ薬剤師」となるためには、業務やシステムなど多角的な面からの変革が必要となります。まずは現状を正しく理解し、何から取り組むべきかを整理して打ち手を検討することが重要です。​

その際に不可欠となる「薬局DX」の一環としては、電子版お薬手帳の導入がおすすめです。これまで個別に管理していた患者様の情報を一元化し、個々人に対してより丁寧なコミュニケーションを行うためにも、ぜひ電子版お薬手帳をご検討ください。

「ヘルスケア手帳」は患者様からの処方箋を来局前に受け取ることができるほか、薬剤師と患者様をつなぐメッセージ機能を搭載。患者様の生活に寄り添った服薬指導やフォローアップを可能にします。

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