2024年度の診療報酬改定、抑えるべきキーワードは?
尾﨑:2024年度に医療・介護・障害のトリプル改定が行われます。これは「物価高騰・賃金上昇への対応・新型コロナへの対応の3つの論点がある異次元の改定になる」と言われているほど重大な改定となります。
改定の基本方針について読み解くことで、これからの薬局に求められる役割について解説します。
FY24トリプル改定のポイント
診療報酬改定は通例だと4月1日に施行されますが、現場の負担が大きくなることを配慮し、2ヶ月後ろ倒しの6月1日に施行されるように見直されました。ただし、薬価改定は例年通り4月1日に行われます。
トリプル改定における薬局向けの重要ワードとして、「在宅医療」「他職種連携」「医療DX」の3つが挙げられます。
これらのワードは、すべて医療機関等との「情報共有」が大事となっています。
なお、門前薬局への報酬に対する議論は続いている状態です。
調査に基づき、財務省は「処方箋集中率が高い薬局は調剤基本料1の対象から外れるべきではないか」「算定要件の見直しを行うべきではないか」という提案をしています。
医療DX対応に向けた国の動き
2025年3月までに全国の薬局に電子処方箋を普及させるとされていますが、実際はDX化を先送りにしている薬局も多く見受けられます。
日本では2021年のオンライン資格確認や電子処方箋を皮切りに、現在はPHデータの利活用を本格化する動きをしています。
オンライン資格確認は原則義務化することで導入対応はほぼ完了し、電子処方箋は今年からスタート。さらに、今後は2025年までに薬歴標準化や診療報酬改定DXも予定しています。
これらの政策は国も危機感を持って進めているため、医療制作やガイドラインへの対応は先送りにすべきではありません。
今後は、いかに患者様のスマホとの情報連携ができるかが重要です。
厚労省からは電子版お薬手帳のガイドラインが発出されています。2023年3月に「1年を目処に実装」とアナウンスされたため、現在は各社で実装に向けて進めているところです。
また、薬局側には、これまで以上に個人情報の取り扱いに注意することや、患者様に対してお薬手帳アプリの説明をしっかりすること、服薬指導時には積極的にお薬手帳アプリの活用をすることがガイドライン上で謳われています。
「電子版お薬手帳ガイドライン」で検索すると、厚労省のサイトから全文ご確認いただけます。
出典:「電子版お薬手帳のガイドラインについて」(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/001199653.pdf
マイナポータルや電子版お薬手帳アプリを活用することで、下記の情報連携が可能となります。
①紙の処方内容と調剤内容が電子化
②医療機関・薬局間で情報が蓄積
③今後マイナポータルやお薬手帳アプリとも情報連携予定
そのため、すべての薬局や医療機関での活用が望まれています。
電子処方箋・電子版お薬手帳の活用によるメリット
患者様のメリット
電子処方箋や電子版お薬手帳が活用されることで、患者様は今までよりも質の高い医療サービスを受けることができるようになります。
- ポイント①適切な薬学管理
- 複数の医療機関・薬局間で情報の共有が進むことで、重複投薬防止やより適切な服薬指導が可能になるため、患者様のさらなる健康増進に貢献できます。
- ポイント②自己管理の促進
- 患者様が自らマイナポータルなどを活用して薬剤情報や服薬履歴をトータルで管理できると共に、必要に応じて医療機関や薬局等から各種サービスを受けることが可能になります。
- ポイント③オンライン診療・服薬指導の利用
- 患者様が処方箋原本を電子的に受け取ることが可能となり、オンライン診療・服薬指導のさらなる利用促進に貢献します。
薬局側のメリット
電子処方箋や電子版お薬手帳の活用は、薬局側にも様々なメリットがあります。
- ポイント①患者様の処方・調剤情報を踏まえたさらに質の高い調剤・服薬指導へ
- 医療機関や薬局を跨いで、直近から過去3年分までの処方や調剤情報が閲覧可能になります。また、調剤結果や伝達事項を、電子処方箋管理サービス経由で処方医へ簡単に伝達できます。
- ポイント②業務効率化
- 処方箋をデータとして受け取ることで、システムへの入力作業等を削減し、事務の効率化が期待できます。さらに、紙の調剤済み処方箋のファイリング作業や保管スペースの削減もできます。
これらにより、より丁寧な対人業務へのシフト、業務効率化による患者様とのコミュニケーション機会増加による「かかりつけ化」を実現します。
- ポイント③紙のお薬手帳持参時と同様に、薬剤服用歴管理指導料が算定できる
- ただし、患者様が算定要件をみたす電子版お薬手帳を利用しているにもかかわらず薬局側でその情報を閲覧できない場合、薬剤服用歴管理指導料自体算定できないので、注意が必要です。
日薬のe薬Link機能を利用すれば、薬局側で導入しているシステム以外のお薬手帳アプリのデータ参照も可能になり、算定できます。
- ポイント④在宅診療対応による加算
- お薬手帳アプリによっては、オンライン服薬指導ができるものもあります。また、今後は0410対応が終了し、オンライン診療やオンライン服薬指導の普及が見込まれるため、電子処方箋や電子版お薬手帳を備えておくことで患者様に対するサービスに繋がります。
電子版お薬手帳を導入することで、適切な薬学管理ができたり業務の効率化が促進できたりとたくさんのメリットがあります。
現在薬局ではDXが進んでおり、今後さらなる促進が見込まれています。
薬局が取り組むべき施策
- ①処方箋の応需拡大
- 中核病院や併科受診など、広域からの患者来局を促進し、新規の処方箋獲得に繋げましょう。またお子様や在宅ご家族様の処方箋等、新規の処方箋も応需できる体制づくりも大切です。
- ②かかりつけ化の促進
- 丁寧なフォローアップやオンライン服薬指導で患者様の繋がりを強化することで信頼を獲得し、リピーター化に繋げます。
- ③業務効率化
- 患者様が併用薬や副作用歴、過去の病歴などを来局前に確認できます。さらに処方内容入力などの事務作業の効率化により、対人業務へシフトすることも可能になります。
薬局のDX化を促進することで、さらなる処方箋獲得やリピーター強化、業務効率化などが見込めます。
ヘルスケア手帳概要
ウィーメックス株式会社では、お薬手帳アプリ「ヘルスケア手帳」を提供しています。
アプリを活用することで、患者様が待つことなくスムーズにお薬を受け取ることが可能に。利用者様のリピート率は約88%と、喜んでいただけていることがわかります。
フォローアップ機能で患者様との繋がりを強化したり、各所との連携により業務の効率化を図れたりと、多くのメリットがあります。
医療DX対応により、処方箋の応需拡大や業務効率化が可能に
- 本講演のまとめ①
- FYトリプル改定におけるキーワードは病院・薬局・施設間の「情報共有」。門前薬局への報酬がどうなるかはまだ議論が続いている状態です。
- 本講演のまとめ②
- 国はオンライン資格確認や電子処方箋をフックにPHRデータの利活用を本格化しています。薬局に対してはさらなる対人業務へのシフトやかかりつけ化が求められてくるので、医療DX対応は急務と言えます。
- 本講演のまとめ③
- 取り組むべき施策のポイントは、処方箋の応需拡大、かかりつけ化の促進、業務効率化の3つです。電子版お薬手帳によってこれらの実現を支援することが可能となります。
これからの時代、医療DXの対応はもはや不可欠と言っても良いでしょう。
医療DXに対応することで、処方箋の応需拡大・かかりつけ化の促進・業務効率化の3つを実現できます。できるだけ早めの対応をおすすめします。