【セミナーレポート】どこよりも早く徹底解説!2024年度調剤報酬改定①~中医協資料から読み解く今回の改定ポイント~

2024年3月14日

概要

本記事では、2024年1月26日に株式会社ドラビズon-lineの菅原さんを講師として迎えて開催したセミナー「どこよりも早く徹底解説!2024年度調剤報酬改定①~中医協資料から読み解く今回の改定ポイント~」の講演内容をもとに、調剤報酬改定の基本方針について解説します。

2024年は6年に1度のトリプル改定の年であるとともに、「患者のための薬局ビジョン」で掲げられた2025年まで残り1年です。調剤報酬改定のポイントを理解することで、薬局業界の方針やこれからの薬局に求められる役割をしっかりと理解しましょう。

なお、本記事は厚生労働省から発表された2024年度診療報酬改定の個別改定項目について、一部講師の意見を交えて解説したものとなります。
本記事は点数の入っていない個別改定項目(短冊)公表段階のものです。点数の入った答申以降の情報は第2回のセミナーのオンデマンド配信でご確認ください。

【講演者】

菅原 幸子
株式会社ドラビズon-line
「ドラビズon-line」編集長
老舗医薬品業界誌である株式会社ドラッグマガジンで20年にわたり、記者・編集に従事。「月刊ドラッグマガジン」編集長を務めた。医薬品メーカー、ヘルスケア卸、薬局・ドラッグストアを取材。2020年7月にWEBメディア「ドラビズon-line」に参画。「PRESIDENT Online」や「東洋経済オンライン」等で社会に業界情報の発信も行う。NHK「あさイチ」など、テレビ番組にも複数出演

調剤基本料改定のポイント

菅原:診療報酬改定の個別改定項目、いわゆる「短冊」と現行を見比べてみると、調剤基本料1〜3の区分は大きく変化がないことがわかります。今回大きな変化がなかった理由としては、賃上げへの対応の影響が大きいと考えられます。賃上げの実施を調剤基本料で手当てしようとした時に、あまり多くの区分を変更してしまうと混乱が生じてしまいます。

これまでの議論の流れからすると、基本料1の現42点や基本料2の現26点に1点ないし2点が賃上げ分として加点されるのではないかと思われます。

変更点としては、基本料2の区分にて、これまで処方箋受付回数が月4,000回超え、70%超のトップワンだけだったのが、短冊では2つもしくは3つの医療機関の処方箋の合計が70%以上であれば基本料2に入るという点です。処方箋集中率の高い医療機関さんが2~3つある薬局さんにとっては影響度が大きい変更になります。

また、敷地内薬局の特別調剤基本料Aと特別調剤基本料Bが新設されたのも、大きな変化です。敷地内薬局については後述いたします。

今回の調剤基本料見直しのポイントは以下の4つです。

  1. ①連携強化加算が地域支援体制加算の下に紐づくものではなく調剤基本料の加算となった
  2. ②地域支援体制加算の要件の強化
  3. ③基本料の中に医療DXへの対応に関する加算が新設される
  4. ④休日・深夜の業務の評価の明確化

連携強化加算の見直し

今回の改定の大きな変更箇所として連携強化加算が地域支援体制加算に下に紐づくものではなく、調剤基本料の加算となったことになります。

連携強化加算の指定を受ける基準として、「『第二種協定指定医療機関』として都道府県知事の指定を受けた保険薬局であること」という明記がされました。

地域支援体制加算の要件が強化

地域支援体制加算の施設基準の算定要件に全体的に見直しが入っています。

地域支援体制加算1の「施設基準(1)地域医療に貢献する体制を有することを示す実績」には、「④かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数の合計が20回以上であること」を含む3項目以上を満たすことが条件となります。これにより、地域支援体制加算1には「かかりつけ」が必須となります。

現行の条件では「麻薬小売業者の免許を受けていること」となっていましたが、短冊では「麻薬を調剤した場合に加算される点数の算定回数が1回以上であること」となりハードルが上がっています。

一方で「地域の多職種と連携する会議に1回以上出席していること」といった項目もあるので、すでに自分たちができているものをピックアップしたり、達成しやすそうなものを選んだりすれば「(1)地域医療に貢献する体制を有することを示す実績」の条件を達成するのは難しくはないのではないでしょうか。

地域支援体制加算2に関しては、10の要件の内容に変更はありません。しかし、満たさなくてはいけない数がかかりつけを含む3項目から8項目(かかりつけは必須ではない)以上になりました。

地域支援体制加算3は、調剤基本料1を取っている方以外の基準となります。

こちらも10の要件のうち「④かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数の合計が40以上であること」及び「⑦在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅療養管理指導費について単一建物診療患者が1人の場合の算定回数の合計が計24回以上であること」を含む3項目以上を満たすことが条件となります。「かかりつけ」と「在宅」は地域支援体制加算3において必須となりました。

地域支援体制加算1の条件では「①薬剤調整料の時間外等加算及び休日等加算40回以上」に対し、地域支援体制加算3は「①薬剤調整料の時間外等加算及び休日等加算400回以上」となっています。

同様に「②麻薬の調剤実績」も1回以上が10回以上と回数が増え、「⑩薬剤師認定制度認証機構が認証している研修制度等の研修認定を取得して保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議に出席」も1回から5回になっています。

地域支援体制加算4も、10要件のうち8項目以上を満たすことが条件となっています。現行から変更になっている項目もありますが、比較的シンプルな構成となっています。

地域支援体制加算の施設基準の(2)以降も大幅に変更となっています。
「地域における医薬品等の供給拠点」の条件として、在庫状況の共有や医薬品の融通が入りました。

休日、夜間を含む薬局における調剤・相談応需体制等の対応においては、周知する機関に訪問看護ステーションが加わり、当該薬局の保険薬剤師(現行は担当者)と連絡先が取れるようにするように新設されました。また、現行では24時間対応となっていた箇所が「休日・夜間を含む時間帯」という表現に変更されています。

在宅医療関連の項目も、新設された箇所が多数あります。こちらは地域支援体制加算の共通の要件なので、地域支援体制加算を獲得する上で大切なところになります。

在宅患者に対する薬学的管理及び指導の実績は算定回数の合計が保険薬局あたり24回以上とされていますが、在宅協力薬局として連携した場合や同等の業務を行った場合を含めることができるので、薬局同士の助け合いでカバーすることもできると考えられます。

同等業務に関しては、在宅患者訪問薬剤管理指導料で規定される患者1人当たりの同一月内の訪問回数を超えて行った訪問薬剤管理指導業務を含みます。ただし、同一グループ薬局に対しての業務は除外されてしまうので注意が必要です。

そのほかにも地域支援体制加算において新設された部分はありますが、さほどハードルが高くなった実感はありません。

地域医療に関連する取組の実施には、要指導医薬品の販売が加わりました。また、患者さんからの相談に対応できるように様々な種類の医薬品を取り扱うことも新設されています。今後薬局が地域医療において活躍するためにも、また今後地域医薬品提供計画を作っていくためにも、今回追加となった要指導医薬品への対応は重要な要件になると考えています。

社会からの要請に応じて、緊急避妊薬の備蓄や相談対応の体制整備やタバコの非販売も加わりました。

敷地内薬局への対応

敷地内薬局に関しては、特別調剤基本料にA及びBの区分を新たに設けました。Aは今までのものであり、Bは調剤基本料の届出がないところの位置付けとなっています。そのため、敷地内薬局においては、基本的にAの部分を読み込んでおけば良いと考えられます。

特別調剤基本料Bの区分だと、調剤基本料だけでなく連携強化加算や在宅患者訪問薬剤管理指導料など多くの項目が算定不可となってしまいます。

また、Aに関しても算定できる加算の比率が下げられることが予想されます。

医療機関の多剤処方時の薬剤料の減額に伴い、敷地内薬局でも多剤処方時の薬剤料の減額規定が設けられます。さらに、1ヶ月あたりの処方箋の交付が4,000回を超える医療機関からの処方箋料の評価を見直すとされています。

グループ一律での引き下げはなくなりましたが、不測的にグループとしての評価の検討が行われる模様です。

かかりつけ薬剤師指導料の見直し

かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の薬剤師としての24時間対応にかかる要件については、休日・夜間等のやむを得ない場合は薬局単位での対応が可能となるなどの見直しが入ります。

まとめ

調剤報酬改定と薬局の経営は密接な関係であるため、国がどのような方針を打ち出そうとしているかを読み解くことで、今後の薬局経営方針を決めていく上で重要な手掛かりとなります。ぜひじっくり公表されている資料を読み込み、これからの薬局に求められる役割を深めていきましょう。

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