【セミナーレポート】どこよりも早く徹底解説!2024年度調剤報酬改定②~改定内容を受けて薬局に求められる対応とは?~

2024年3月29日

概要

本記事では、2024年2月20日に開催したセミナー「どこよりも早く徹底解説!2024年度調剤報酬改定②~改定内容を受けて薬局に求められる対応とは?~」の講演内容をもとに、点数・算定要件・施設基準情報など改定詳細を解説するとともに、各団体でどのような反応や議論が行われているかをご紹介します。さらに、今回の改定に向けて薬局経営者や現場薬剤師はどう動くべきなのかを解説いたします。
「生き残る薬局」となるために取り組むべきことを知りたい方は、ぜひご一読ください。

なお、本記事は厚生労働省から発表された2024年度診療報酬改定に関する答申について、一部講師の意見を交えて解説したものとなります。

前編にあたる第1回セミナーでは、短冊の概要を解説しています。下記URLより視聴をお申込みいただけますので、ぜひご覧ください。
https://healthcarenote.jp/seminar/20240126seminar/

【講演者】

菅原 幸子
株式会社ドラビズon-line
「ドラビズon-line」編集長
老舗医薬品業界誌である株式会社ドラッグマガジンで20年にわたり、記者・編集に従事。「月刊ドラッグマガジン」編集長を務めた。医薬品メーカー、ヘルスケア卸、薬局・ドラッグストアを取材。2020年7月にWEBメディア「ドラビズon-line」に参画。「PRESIDENT Online」や「東洋経済オンライン」等で社会に業界情報の発信も行う。NHK「あさイチ」など、テレビ番組にも複数出演

調剤基本料と加算で3点の増点が見込める

菅原:調剤基本料1の現行と改定後を比べると、3点増点となっています。また、調剤基本料2や調剤基本料3も増点幅は同じです。

調剤基本料1は賃上げ対応などがあるため、改定後は3点増加の45点となっています。地域支援体制加算1については現行からマイナス7点と大きく報道されています。しかし、連携強化加算の増点と医療DX推進体制整備加算1の新設でプラス7点ということを考えると、新設分でマイナス7点をカバーすることで調剤基本料1は最終的に増点3点であると言えます。連携強化加算についてはこれまで地域支援体制加算の算定が要件でしたが独立した加算になりましたので、算定しやすくなったともいえます。一方、DX加算は月に1回算定であることには注意が必要です。

医療DX推進体制整備加算1の要件の詳細はまだ出ていませんが、すでに短冊に入っているマイナ保険証の一定の実績がひとつのハードルになってくると考えられます。

調剤基本料の加算に「在宅」が新設

調剤基本料の加算として、在宅薬学総合体制加算が新設されました。

在宅薬学総合体制加算1として15点、在宅薬学総合体制加算2として50点が加わったことにより、在宅患者調剤加算は廃止されます。

在宅患者調剤加算は廃止になったものの、新設の加算1がとれればプラスマイナスゼロ、さらに加算2が算定できる(クリーンベンチなどの設備が整っている)薬局であれば、50点算定ができるため、増点の可能性もあります。

調剤基本料と地域支援体制加算の点数まとめ

調剤基本料1〜3はどれもプラス3点、地域支援体制加算1〜4はマイナス7点。どの区分も増点幅・減点幅は同じです。

ただし、特別調剤基本料は7点から5点、届出がないBの場合(新設)は3点となります。

調剤基本料については、基本料2の区分において「月4,000回超70%超」の「70%超」にかかる部分が現行の「医療機関上位1」から「月4,000回超上位3の医療機関処方箋合計70%超」と変更になりました。この区分に該当する薬局さんにとっては減点となると考えられます。

地域支援体制加算の要件

地域支援体制加算の要件に関して、今回は地域支援体制加算が厳格化されたと言えるでしょう。これまで異なっていた地域支援体制加算の項目が共通化されました。ただ、地域支援体制加算の区分によって各実績回数や満たす項目数は異なっています。今回の改定のポイントとなるので、よく注意してください。

また、地域支援体制加算1については、「④かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数」が必須となったこともポイントになります。
今回の変更では以下のように地域支援体制加算1~4と算定要件の項目を共通になりました。
地域支援体制加算1は④の「かかりつけ」を含む3項目以上
地域支援体制加算2は8項目以上
地域支援体制加算3は④の「かかりつけ」と⑦の「単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績」を含む3項目以上
地域支援体制加算4は8項目以上

賃上げに向けた対応について

令和6年度の診療報酬改定では、薬局の調剤基本料について職員の賃上げを踏まえた引き上げを行います。

政府目標としては令和6年度に2.5%、令和7年度に2%の賃上げを掲げています。令和6年度にまとめて引き上げを行う方法では年間で基本給3.5%を配分することになります。定期昇給はこちらの配分の対象外となりますので、基本給等の引き上げが求められています。

厚生労働省は、今回の診療報酬改定による賃上げが反映されているかの抽出調査実施も予定しています。

調剤基本料の加算獲得で減収を防ぐ

「地域強化加算」が地域支援体制加算から独立した加算になったため、薬局が減収しないためには、基本料の加算をしっかり取っていくことが大事になります。また、「第二種指定医療機関」の条件については各都道府県から詳しい情報が発信されているので、確認してぜひ加算獲得を目指すことをおすすめします。

また、今後の通知で発表される内容の想定事項として、要指導医薬品や検査キットの販売や新興感染症の発生時における自宅・宿泊療養患者への対応に係る研修、災害発生時における対応の研修が挙げられています。

各薬剤師会での研修も始まっているので、しっかり研修を受け、加算獲得に向けて取り組んでいくことをおすすめします。

地域支援体制加算のポイント

地域支援体制加算1では、現行では届出でよかったものについて実績回数が必要になります。また、かかりつけも必須となります。

地域支援体制加算2は夜間・休日の加算が400回以上から40回以上とハードルが下がっている部分もありますが、満たす項目数は8つ以上とハードルは高くなっています。

地域支援体制加算3は夜間・休日等の対応実績が400回以上、服薬情報等提供料の算定回数60回以上など、実績回数は変わっていません。そのため、これまで地域支援体制加算3を取っていた薬局が今後取りづらくなることは考えにくいでしょう。

地域支援体制加算4も現行と大きく変わらないとされています。

地域支援体制加算の共通項目として別出しとして規定されているものが、休日、夜間を含む薬局における調剤・相談応需体制等の対応です。

休日・夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務に対応できる体制に係る周知を行うことが必要となります。今後の通知で、周知の仕方についての細かい情報が出てくるのではないかと考えられます。

周知方法の1つの手段として、地域薬剤師会によるリスト化が挙げられています。地域において求められる夜間・休日等の対応について地域薬剤師会が中心となりつつ、会員・非会員を問わない薬局の協力が必要となっている状況を受け、改定項目にも入ってきています。

現在日本薬剤師会がリスト作成を進めているので、地域支援体制加算を取るための関わり方をお近くの地域薬剤師会に問い合わせてみると良いでしょう。

地域支援体制加算まとめ

厚生労働省の資料で、地域支援体制加算の見直しについてまとめられています。地域医療に貢献する体制を有することを示す実績は共通となっており、新たに小児特定加算の算定実績が追加されています。

新設された医療DX推進体制整備加算

減収を防ぐためには、調剤基本料の加算を漏れなく取っていくことが重要です。そのためには、今回新設された医療DX推進体制整備加算をしっかり読み込んでおきましょう。

要件の中の実績に関しては、「(7)マイナンバーカードの健康保険証利用の実績を一定程度有していること」の実績について、今後の通知でどのような実績が出てくるのか注目する必要があります。

在宅薬学総合体制加算について

在宅薬学総合体制加算においては、1もしくは2を取ることが大事です。

在宅薬学総合体制加算1は、すでに在宅に対応している場合は比較的取りやすいと思います。一方で、在宅薬学総合体制加算2の場合は医療用麻薬の備蓄やクリーンベンチの備えが必要となるので、算定できる薬局が限られてくるでしょう。ただし、加算2が算定できる薬局は廃棄などのコスト分が発生しますので、このコストを加点でカバーしていくというメッセージだと捉えています。

在宅患者訪問薬剤管理指導料のポイント

在宅患者訪問薬剤管理指導料については、定期訪問の上限回数を週2回かつ月8回までに見直されたことが重要ポイントです。

また、休日または深夜に訪問指導をした場合は400〜1000点の加算がされるので、これまで緊急で訪問対応されていた薬局にはプラスになると考えられます。新興感染症等の患者への訪問についても、引き続き算定できるようになっています。

在宅業務に関する改定のまとめ

在宅業務に関する調剤報酬改定の概要も厚生労働省の資料にまとめられています。

在宅移行期に在宅移行初期管理料が新設されたことが大きなポイントで、ターミナル期には夜間訪問や休日訪問などの加算が取れるようになりました。

さらに無菌製剤処理加算の評価対象の見直しが入り、医療用麻薬を希釈せず原液のまま注入機等に無菌的に調製した場合が追加されました。

在宅業務に関しては第8次医療計画でもとても必要だと言われていた部分なので、その流れを受けて加算となっているのだと思われます。

敷地内薬局への対応

敷地内薬局の調剤基本料の諸加算については、点数の100分の10に相当する点数の加算とされているため、減算の方向だと考えられます。

特別調剤基本料Aの施設基準も保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が7割から5割へ変更となっている厳しい状況で、処方箋料も現行より下がっている流れにあります。
また、保険薬局の指定・更新時の土地・建物の賃貸借料の確認など指定手続きの見直しを行うという記載が入ってきています。これは厚生労働省として敷地内薬局をもっと詳しく把握していこうという姿勢の表れだと見ています。

かかりつけ薬剤師指導料の見直し

かかりつけ薬剤師指導料では吸入薬に係る情報提供が算定可能となったほか、今まで1名までとされていた保険薬剤師の規定が複数人でも算定可能になり、薬局単位でのかかりつけ体制を発揮できるように変更となっています。

これからの薬局に求められる対応

地域を見る
今後は自局や近隣地域だけでなく、都道府県レベルの地域全体を見ながら薬局・薬剤師サービス提供に取り組んでいくことが求められると思います。それが結果的に薬局・薬剤師サービスの維持や向上に繋がると考えられます。
医薬品供給拠点であることを意識する
OTC医薬品を含めた供給体制に加えて、相談にも乗れる意識を持つことが必要です。また、緊急避妊薬や抗原検査キットの問題など、社会から求められていることにも敏感でいる姿勢が求められるでしょう。これらの対応にすでに取り組まれている薬局は、今回の改定はプラスになっているのではないでしょうか。
サービスの質の向上
今回の改定に限らず、今後DX活用は求められてくる部分だと思います。例えば、マイナ保険証を活用することで色々な情報が薬局に入ってきますし、医科との情報連携も円滑になります。マイナ保険証をはじめとしたDXを推進することで、治療の質をさらに向上させたいというのが今回の改定におけるメッセージだと考えられます。

まとめ

今回の改定でさまざまな変化がある一方で、変わらない部分もあります。変化がない部分に「なぜ変わらなかったのか」と注目することも必要かと思います。

薬剤調製料に関しては今回の改定では変更はありませんでした。薬局が地域における医薬品提供拠点であることを考えると「対物業務」が基本にあって、「対人業務」が対物業務を高めることにもつながると言えるのではないでしょうか。

今回の改定で、薬剤調製料に変更がなかったのは、「対物から対人へ」というメッセージによって「対物業務の軽視」という間違った印象を払拭したいという狙いもあるのではないかと考えています。

改定により変わった部分も変わらなかった部分も把握し、今後薬局に求められる対応をしっかりと押さえておきましょう。

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本セミナーはオンデマンド配信にて視聴が可能です。セミナーを視聴することで、より一層理解度が深まるでしょう。ぜひ下記ページからお申し込みください。

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2024年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算1の算定要件に「かかりつけ」対応が必須化となったことに加え、かかりつけ薬剤師指導料にも見直しが入るなど、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」の推進が重要になってきています。
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