災害時に命を守る!電子版お薬手帳が避難所で役立つ理由
2025年11月7日
令和6年1月の能登半島地震、平成28年の熊本地震、そして私たちの記憶に深く残る東日本大震災。これらの大規模災害で共通して浮き彫りになったのは、避難所での医療支援における情報不足の深刻さでした。避難生活の方で「服用している薬の名前や量がわからない」、「処方内容を確認できない」といったケースが多く、持病の治療が中断したり体調が悪化したりする要因となりました。
特に、慢性疾患を抱える中高年の方々にとって、普段服用している薬の情報が医療スタッフに正確に伝わらないことは、文字通り「命に関わる」問題となります。しかし、この課題を解決する強力なツールがあります。それが電子版お薬手帳です。
災害時になぜお薬手帳が命を救うのか
災害が起きたとき、避難所や臨時医療所などで診察する医師や薬を出す薬剤師は、被災した方にどんな持病があり、いつもどんな薬を飲んでいるか、全く分からないまま治療をすることになります。
- 「血圧の薬をください」と言われても、それが何の薬かはっきりと分からない
- アレルギー情報が分からず、適切な薬を選択できない
- 複数の薬を服用している場合、飲み合わせの心配がないか確認ができない
- 避難所を移るたびに、最初の病歴から聞き取る必要がある
これらの問題で、お薬手帳を持っていなかった被災者には、普段飲んでいる薬が分からず、最適な薬を出すのが難しかった、という例が数多く報告されました。
紙のお薬手帳の限界
従来の紙のお薬手帳も、災害時には役立ちますが、いくつかの限界があります。
- 持って出るのを忘れる心配:
緊急避難時に持っていけない可能性があります。 - 紛失・破損の心配:
津波や火事などでなくなってしまう可能性があります。 - 記入できる情報が少ない:
手書きのため、記入できる量が限られます。 - 何冊も管理するのが大変:
病院ごとに違う手帳を持っている場合、管理が難しくなります。
スマートフォンで使える「電子版お薬手帳」の災害時特別機能
いつでもどこでも持ち歩ける
電子版お薬手帳の最大の利点は、いつも持ち歩くスマートフォンに情報が保存されていることです。普段使うスマートフォンがお薬手帳になるため、いつでもお薬情報が確認できます。また、持っていくのを忘れたり、なくしたりする心配も減らすことができます。
実際に、災害の時お薬手帳があれば、医師の指示書(処方箋)がなくてもお薬をもらえる場合があります。津波や停電で、病院や薬局で過去の薬の記録が確認できない場合にも役立ちます。
豊富な情報量と正確さ
- 薬の詳しい記録(どんな病気に効くか、注意すること、副作用など)
- 薬の服用履歴が正確に残る
- アレルギー情報
- 血圧や体調変化の記録
- 複数の医療機関でもらった薬をまとめて管理できる
- 薬の詳しい記録(どんな病気に効くか、注意すること、副作用など)
- 薬の服用履歴が正確に残る
- アレルギー情報
- 血圧や体調変化の記録
- 複数の医療機関でもらった薬をまとめて管理できる
避難所での医療支援をスムーズにする方法
医療スタッフとスムーズに情報共有できる
避難所や臨時で開かれた病院では、限られた時間で多くの被災者を診察する必要があります。電子版お薬手帳があれば、服薬内容や処方歴をすぐに提示できるため、診察や処方がスムーズになり効率も上がります。
- 薬の履歴を聞く時間が大幅に短縮される
- 正確な薬剤名を確認できるため、早く薬を出せる
- アレルギーの有無を素早く確認できる
- いつも飲んでいる薬と同等の薬を選べる
- 薬の飲み合わせを確認できる
- 適切な投与量を決められる
💡利用のヒント
実際の避難所では高齢の方の利用も多いため、スマートフォンに不慣れな場合は家族と一緒に使えるよう練習しておくと安心です。さらに紙のお薬手帳も持っていれば、スマーとフォンの電池切れや通信障害のときでも確実に情報を伝えられるので、より心強い備えになります。
災害時の特別な薬剤提供制度
厚生労働省は、災害の時に特別なルールを決めています。持病のある被災者が、処方箋を持たずに薬局を訪れた場合でも、後から処方箋を書いてもらうことを条件に薬局で薬を受け取ることができる、というものです。
この制度を活用するとき、電子版お薬手帳があれば
- 薬剤師が正確に薬剤を特定できる
- 安全に薬がもらえる
- 早く薬がもらえる
ことが可能になります。
実際の災害時事例と生存者の体験談
熊本地震から学んだこと
2016年の熊本地震では、亡くなった276人のうち、221人は災害が原因で体調を崩して亡くなった方でした。そのほとんどが70歳以上の方だったという深刻な状況が発生しました。これらの災害関連死の多くは、慢性疾患、いわゆる持病の治療が続けられなかったことが原因の一つと言われています。
避難所での長引く健康問題
高齢者が多い避難所での生活が長期化するほど心配になるのが、災害が原因で命に関わる健康問題です。能登半島地震でも同様の課題が浮き彫りになりました。
- 血圧の急激な変化(ストレスによる上昇)
- 糖尿病患者のインスリン管理が難しい
- 精神的ストレスにより、元々あった症状が悪化する
- 感染症にかかる危険性が高まる
精神的なストレスで血圧が高くなっている方も非常に多く、血圧が高い状態が続くと、心筋梗塞や脳梗塞などの病気につながる心配がありました。
生き残った方の証言から学ぶ
東日本大震災や熊本地震で被災した方の中には、「お薬手帳があったおかげで適切な治療を続けることができた」という声が多く寄せられています。特に以下のような場面で、その価値が証明されました。
- 避難所を移動するとき:
新しい医療スタッフにも、すぐに状況を説明できる - 遠方へ避難するとき:
普段通わない病院でも、適切な治療を続けることができる - 薬剤が不足しているとき:
代わりに使える薬を選ぶときに、安全性が確保できる
参考:日本薬剤師会「東日本大震災時におけるお薬手帳の活用事例」
参考:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000158556.pdf)
参考:内閣府 防災情報のページ「令和6年能登半島地震による被害状況等について」
緊急時のバックアップ機能とオフライン対応
電気が止まったり、電波がつながらなくなっても安心
災害時に最も心配されるのが、停電や通信障害で電子機器が使えなくなることです。しかし、現在の電子版お薬手帳アプリは、こうした非常事態でも使用できるよう作られています。
オフライン閲覧機能: オフライン状態、つまり、電波が届かずインターネットにつながらない状態や、災害のような非常時でも、お薬の情報を見られる仕組みが導入されています。これは、スマートフォンの本体にデータが一時的に保存されているからです。
- インターネット上(クラウド)に自動でデータを保存する
- スマートフォンを機種変更したときにデータを移行できる
- 家族の間でデータを共有できる
スマートフォンのバッテリー対策
災害時のスマートフォン利用で大切なのが、バッテリーの管理です。
- 携帯充電器(モバイルバッテリー)を常備しておく
- 省電力(節電)モードを使う
- 重要なお薬情報は画面を写真に撮って保存しておく(スクリーンショット)
- 紙のお薬手帳と併用する(特に大事な薬だけ)
安全対策と緊急時の使い方
災害時には、万が一本人が意識をなくしたとき、緊急で情報にアクセスするかも考えておく必要があります。
- 緊急連絡先を登録しておく
- 家族が代わりに情報を見られる機能を活用する
- 医療ICカード情報と連携しておく
- マイナンバーカードと連携して活用する
マイナンバーカードも、お薬手帳と同じような機能を果たせます。マイナンバーカードを使った「マイナポータル」というサイトから、正確な保険情報や、過去に処方された薬の情報を見ることができます。これは災害時に薬を出す上でとても大切な情報になります。
今すぐできる災害への備え
電子版お薬手帳を使い始める準備
導入の手順
1.安心して使える電子版お薬手帳アプリをダウンロードする
2.基本情報(氏名、生年月日、アレルギー情報など)を登録する
3.今飲んでいる薬の情報を入力する
4.必要に応じて、家族分のアカウントを設定・登録する
5.バックアップ設定を確認する
- 緊急連絡先の登録
- インターネットにつながらない状態でも見られる設定を確認する
- 家族のアクセス権限の設定をする
- 定期的にデータ更新をする
薬の準備と管理
電子版お薬手帳と併せて、実際に薬を準備・備蓄しておくことも大切です。
- 一般的な慢性疾患(持病)の薬:1週間分
- 命に関わる薬(インスリンなど):2週間分
- 高層住宅に住んでいる人:最大1ヶ月分
- 使用期限を定期的に確認する
- いつも使っているものを買い足しながら、古いものから使う(ローリングストック)
- 冷蔵庫で保存する薬の保冷対策
- 持ち出し用に小分け包装する
家族との情報共有
災害時には家族同士の協力が大切です。
- 家族全員分の薬情報を共有する
- 緊急時の連絡方法を確認する
- かかりつけ医・薬局の連絡先を共有する
- 避難場所で家族と合流する方法を確認する
- 簡単な使い方を練習する
- 紙のお薬手帳も一緒に使う
- 定期的に操作できるか確認する
- 代わりに操作してくれる人を決めておく
地域との連携
個人レベルの準備に加えて、地域との連携も大切です。
- 近くのかかりつけ薬局を確認する
- 地域の会(自治会)の防災訓練に参加する
- 災害時の医療体制を理解する
- ボランティア薬剤師制度を理解する
まとめ:電子版お薬手帳で命と健康を守る
災害はいつ、どこで起こるか予測できません。しかし、適切な備えがあれば、被害を最小限に抑えることができます。
電子版お薬手帳は、単なる便利な道具ではありません。災害時に「命を守るための大切な綱(ライフライン)」のような役割を果たします。薬が手に入るかどうかは健康に直結するため、電子版お薬手帳は安心して備えるための“鍵”にもなります。
- 電子版お薬手帳アプリをダウンロードする
- 現在の薬剤情報を正確に入力する
- 家族の分も設定して、情報を共有する
- 定期的な情報更新を習慣化する
あなたと大切な家族の命と健康を守るために―――。
今日から少しずつ、電子版お薬手帳を使った災害対策を始めませんか?
⚠️大切なお知らせ
災害時は状況が刻々と変化します。最新の避難情報や医療機関の稼働状況は、必ず自治体の公式サイトや防災アプリでご確認ください。

